Home
1262 words
6 minutes
【DFT】M06 / M06-2Xの数式構造:省略された「パラメータの塊」の中身

最終更新:2025-12-28

注意: この記事はAIによって自動生成されたものです。正確な情報については、必ず引用元の原著論文をご確認ください。

1. 全体像:ハイブリッド・メタGGAの定義式#

M06およびM06-2Xの交換・相関エネルギー EXCE_{XC} は、以下のハイブリッド形式で定義されます。

EXCM06X=X100EXHF+(1X100)EXDFT+ECDFTE_{XC}^{M06-X} = \frac{X}{100} E_X^{HF} + \left( 1 - \frac{X}{100} \right) E_X^{DFT} + E_C^{DFT}

ここで、XX が「HF交換(ハートリー・フォック交換)を混ぜるパーセンテージ」です。この XX の値が、2つの汎関数の決定的な違いです。

  • M06: X=27X = 27 (HF交換 27%)
    • 金属結合も考慮してバランスを取った値。
  • M06-2X: X=54X = 54 (HF交換 54%)
    • “2X” は「M06の2倍(2 times) の交換(Exchange)を入れた」という意味です。これにより、自己相互作用誤差を劇的に減らし、有機分子の反応障壁や分散力を記述します。

2. 省略されがちな「DFT項」の中身#

M06シリーズが「メタGGA」と呼ばれる理由は、DFT部分の EXDFTE_X^{DFT}ECDFTE_C^{DFT} が、電子密度 ρ\rho と勾配 ρ\nabla \rho だけでなく、運動エネルギー密度 τ\tau に依存する複雑な関数だからです。

運動エネルギー密度 τ\tau の導入#

まず、スピン σ\sigma (α\alpha または β\beta) ごとの運動エネルギー密度 τσ\tau_\sigma を定義します。

τσ=12ioccψiσ2\tau_\sigma = \frac{1}{2} \sum_{i}^{occ} |\nabla \psi_{i\sigma}|^2

これを無次元化して扱いやすくした変数 zσz_\sigma(または ww)などを汎関数の内部で使用します。

DFT交換エネルギー EXDFTE_X^{DFT} の正体#

M06のDFT交換項は、PBEのような単純な形ではなく、以下のような「べき級数展開」を含んでいます。

EXDFT=σdrFXσ(sσ,zσ)ϵXunif(ρσ)E_X^{DFT} = \sum_{\sigma} \int d\mathbf{r} F_{X\sigma}(s_\sigma, z_\sigma) \, \epsilon_X^{unif}(\rho_\sigma)

ここで FXσF_{X\sigma} は交換エンハンスメント因子と呼ばれ、M06では以下の形式(VS98形式の拡張)をとります。

FXσ(sσ,zσ)=i=0maiwσ(sσ,zσ)iF_{X\sigma}(s_\sigma, z_\sigma) = \sum_{i=0}^{m} a_i w_\sigma(s_\sigma, z_\sigma)^i
  • sσs_\sigma: 被約密度勾配(電子密度の変化率)。
  • zσz_\sigma: 運動エネルギー密度 τ\tau に依存する変数(τ/τLSDA1\tau / \tau^{LSDA} - 1 のような形)。
  • aia_i: 実験データにフィッティングして決められた多数のパラメータ

「ここが省略されている!」 通常の解説では「柔軟な関数形」と一言で済まされますが、実際にはこの FXF_X の中に、** sszz の複雑な多項式** が詰め込まれています。M06では数十個のパラメータ aia_i を調整することで、金属結合や非共有結合といった異なる物理現象を同時に再現させているのです。

DFT相関エネルギー ECDFTE_C^{DFT}#

相関項も同様に、反対スピン同士(αβ\alpha\beta)と平行スピン同士(σσ\sigma\sigma)に分け、それぞれをメタGGA形式で記述します。

ECDFT=ECαβ+ECαα+ECββE_C^{DFT} = E_C^{\alpha\beta} + E_C^{\alpha\alpha} + E_C^{\beta\beta}

各項もやはり、密度勾配や運動エネルギー密度を含む変数の多項式で展開され、多数のパラメータ(cic_i 等)を含んでいます。


3. なぜ「2X」が有機化学に強いのか?#

数式からその理由を読み解くことができます。

EXCM062X=0.54EXHF+0.46EXDFT+ECDFTE_{XC}^{M06-2X} = 0.54 E_X^{HF} + 0.46 E_X^{DFT} + E_C^{DFT}
  1. 自己相互作用誤差のキャンセル: DFT特有の「電子が自分自身と反発してしまうエラー(自己相互作用誤差)」は、HF交換を入れることで相殺できます。X=54%X=54\% という高い割合は、電子が局在化しやすい有機分子の反応遷移状態(結合が伸びて電子が不安定な状態)において、このエラーを強力に抑え込みます。

  2. 長距離の引力効果: 数式上、明示的な C6/R6-C_6/R^6 項はありませんが、メタGGA項(EXDFTE_X^{DFT}ECDFTE_C^{DFT} の多項式部分)のパラメータが、「中距離で引力が働くように」調整されています。HF交換の多さが、長距離での電子密度の広がりすぎ(非物理的な非局在化)を防ぎ、結果として分散力のような弱い相互作用を記述する助けになっています。

まとめ#

M06とM06-2Xの数式上の違いはシンプルに 「HF交換の混合率 XX ですが、その裏側にあるDFT項(EXDFT,ECDFTE_X^{DFT}, E_C^{DFT})は、運動エネルギー密度 τ\tau を変数に含む 「数十個のパラメータを持つ多項式の塊」 です。

  • M06 (X=27X=27): 金属も扱えるようにパラメータとHF混合比を調整したバランス型。
  • M06-2X (X=54X=54): 金属を捨て、有機分子の精度(特に反応障壁と分散力)に全振りした特化型。

この数式の成り立ちを理解しておくと、「なぜM06-2Xを遷移金属に使ってはいけないのか(HFが多すぎて静的相関が破綻するから)」がより深く納得できるはずです。

参考文献#

  • Y. Zhao and D. G. Truhlar, “The M06 suite of density functionals for main group thermochemistry, thermochemical kinetics, noncovalent interactions, excited states, and transition elements: two new functionals and systematic testing of four M06-class functionals and 12 other functionals”, Theor. Chem. Acc. 120, 215 (2008).
【DFT】M06 / M06-2Xの数式構造:省略された「パラメータの塊」の中身
https://ss0832.github.io/posts/20251228_m06-functional-overview-ja_2/
Author
ss0832
Published at
2025-12-28